場面かんもく児の親”あるある”ー親の予期不安と先回り行動のメカニズムを徹底解説
”自分の不安”と向き合うこと─親が変わると、子どもは変わる

こんにちは。場面緘黙支援専門心理カウンセラー
公認心理師の中之園はるなです
今日のテーマは、場面かんもく児の親御さんの「不安の取説」です。
気づかないうちに心の中で芽を出す「不安の種」

私たちは日々の生活の中で、さまざまな感情とともに暮らしています。そのなかには、楽しい気持ちや安心だけでなく、小さな“心配の芽”も混ざっているものです。
ただ、この 「自分の中に存在する不安」 は、自分ではなかなか気づけません。
なぜなら、不安は最初から強く表れるのではなく、静かな“種” のように心の奥に居座るからです。
そしてその種は、わが子が、家の外では話せない場面かんもく児の親御さんの場合、特定の出来事に触れたときに芽を出すことがあります。一例をあげると
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子どもが学校で話せなかった日、明日もそうかもと思う
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わが子が登園を行き渋るとき、胸がザワッとする
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新しい場面に子どもが遭遇すると思うと自分が緊張する
この「ざわつき」は、心理学でいう 予期不安 が働いているサインです。
予期不安とは何か─起きてもいない未来に心が反応してしまう仕組み

不安には、
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実際に危険があるときの不安
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起きていない未来に対する不安(予期不安)
の2種類があります。
場面緘黙や不安症の支援では、とくに 予期不安(anticipatory anxiety) が重要です。
予期不安は、私たちを危険から守るために存在する正常な仕組みです。しかし、これが 過度に働きすぎると、日常生活に次のような困りごとが生じます。
予期不安が強すぎると、親に何が起きるか

予期不安が過度に働くと、親御さんの行動や判断に次のような傾向があらわれます。
目次
● いつも緊張している
「また話せなかったらどうしよう」
「今日は大丈夫だろうか」
● 子どもの変化に過敏になりすぎる
小さな変化にも大きく心が動き、必要以上の反応や心配につながります。
● 先回り行動(anticipatory accommodation)が増える
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子どもが話す前に代弁する
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不安を感じる前に回避させてしまう
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子どものチャレンジの機会を削ってしまう
これらはすべて「守ってあげたい」という思いの表れですが、実は…
“過度な先回り”は、不安の維持因子になるという研究

① Lebowitz et al.(2014, 2020)
親の配慮行動(accommodation)が多いほど、
子どもの不安が維持・悪化しやすいことが示されている。
(Supportive Parenting for Anxious Childhood Emotions: SPACE)
② Piacentini et al.(2019)
過保護や先回り行動は「不安の維持因子」として働く。
③ Barrett et al.(1996)
親の不安が高いほど、子どもの回避行動も強まりやすい。
④ 園山(2021, 日本)
場面緘黙の改善では「家庭内の過度な代弁・回避の連鎖」を断つことが必須。
親の不安が子どもに情動伝染(emotional contagion)する
親の感情が子どもに“伝染する”ことをご存じですか?
これは、心理学で 情動伝染(emotional contagion) と呼ばれ、数多くの研究で根拠が示されています。
⑤ Hatfield, Cacioppo & Rapson(1994)
情動は表情・声の調子・身体反応を通して他者に伝わることを実験的に証明。
⑥ Feldman(2015)
親子の相互作用における「情動シンクロ」が子どもの情動調整に影響すると報告。
親の不安レベルが高いと、子どもの生理的ストレス反応も高まりやすい。
⑦ Waters et al.(2014)
親が緊張すると、子どもの心拍・皮膚電気反応などの生理反応が上昇する“ストレスの伝播”を実証。
これらの研究が示しているのは、つまり…
親の“見えない不安”は、言葉より早く、子どもの体に届いてしまう
ということです。
だからこそ、親御さんが自分の不安に気づき、緩めることが何よりも大切なのです。
自分の不安は自分では見えない──他者の視点という“鏡”が必要

心のクセは、自分では気づきにくいものです。
自分を俯瞰して観る=「メタ認知」は意外と難しいものです
鏡がなければ自分の顔が見えないように、
心にも 専門家という鏡 が必要なのです。
SMPTでは、親御さんが無意識に抱えている「不安のクセ」を可視化し、整えていきます。
場面かんもく改善メソッド【SMPT®】が“親支援”を中心にしている理由

ミライ開花SMPT®(Selective Mutism Parent–child Training)は
場面かんもく症の子を持つ、親御さんの不安を整えることを中心においているメソッドです。
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親御さんが安心すると、子どもの行動が自然に広がる
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先回り行動が減ると、子どもは自分の力を取り戻す
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家庭の安心が「子どもの脳の安全地帯」をつくる
これは研究的にも実践的にも一致している、大切な視点です。
そして、ここからが支援の本当の第一歩

親御さんの心が整うと、子どもは驚くほど自然に伸び始めます。
これは私が12年以上、4,000人以上を支援してきて実感している確かな事実です。
不安はあなたの味方にもなる──そして次の一歩へ

不安は、親御さんが“お子さんを本気で大切に思っている証”です。
気づき、整え、手放していくことで、不安はあなたを守る味方に変わっていきます。
あなたが安心すると、子どもは自由になります。
あなたが軽くなると、子どもは前に進めます。
そして、もし今
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子どもの不安の影響を強く感じている
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自分の予期不安が子どもに影響している気がする
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先回り行動がやめられない
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この悪循環から抜け出したい
と感じているなら、
それは“変わり始めているサイン”です。
個別相談のご案内

あなたの不安のパターンや、親子の関わり方のクセは、
文章だけでは把握しきれない“個別性”があります。
もし、あなたが
「自分の不安に振り回されず、子どもを正しく支えたい」
「この悪循環から抜けたい」
と思われたなら、一度私の 個別相談 にお越しください。
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あなたとお子さんの状況を丁寧に整理し
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不安のループがどこで起きているのかを可視化し
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今日からできる“正しい関わり方”を明確にお伝えします
あなたの不安が軽くなると、子どもの未来は確実に変わります。
その第一歩を、私はこれからも応援します。
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👆画像をタップして詳細をご覧ください。2022年発売、当時中学1年生の場面かんもくの女児がいました。
〇緊張が強くて、上手く動けない(緘動が強い)
〇授業のノートが取れない
〇トイレに行けない
〇教室でみんなと給食が食べられない
〇体育の授業に出れない
〇困ったことがあっても意思表示が出来ず泣いてしまう
このような症状に苦しんでいました
3年半の支援ののち、話せるようになりました。
この子のその後は~高校受験は面接で「話せて」合格!普通高校に進学しました。
これ以降は何も支援していません。ですが驚くべきことが
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2024年 あさ出版より商業出版(重版出来)
全国書店/Web書店で発売中
場面緘黙症は、自閉スペクトラム障害(ASD)や
注意欠如・多動性障害(ADHD)などの発達障害と比べると認知度が低く、
「話さない」以外に目立った困りごとがないために、
医療や教育現場でも「様子を見る」扱いになりやすい。
また、親が代わりに話す・答えるといったかばい方をしていると、
ますます話せなくなる悪循環に陥るので、まずは親が気づくこと。
著者が構築した「緘黙改善メソッド」の実践で、かんもくを克服した事例を多数紹介。
今すぐできる、親が子どもを助けるための本。
―もくじ―
Chapter 1 わが子が家の外で話せないことに気づいたら
Chapter 2 子どもを追い詰めてしまう? 気をつけたい親の対応
Chapter 3 今すぐ親にできるサポート【場面かんもく改善メソッド】
Chapter 4 年齢別10の事例解説で学べる!【場面かんもく改善ケース】
Chapter 5 Q&Aでわかる!「場面かんもく」について覚えておきたい応用知識
