熊本の場面かんもく家族支援・メンタルケア

場面かんもく症の相談で、『様子を見ましょう』と言われたとき、親が確認すべき3つのこと

―場面緘黙の相談でよくある“様子見”を専門的に読み解く―

お子さんが学校で話せない、あるいは人前で話すことに強い不安を感じているとき、保護者がよく言われる言葉があります。

「様子を見ましょう」

医師やスクールカウンセラー、学校関係者などから言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。

この言葉は一見すると穏やかで、慎重な判断のようにも聞こえますが、多くの保護者の方が、そのあとにモヤモヤした気持ちを抱えるのではないでしょうか?

 

いつまで様子を見るの?

何をもって改善と判断するの?

このまま待っていて本当に大丈夫なの?

 

この記事をお読みくださっているあなたが、かんもく児の保護者様ならこんな気持ちになったことはありませんか?

実はこの疑問はとても自然なものです。

なぜなら「様子を見る」という言葉には、本来必要な情報が含まれていないことが多いからです。

 

この記事では、「様子を見ましょう」という言葉を、医療の考え方、心理学の研究、場面緘黙支援の視点から整理し、保護者が確認しておくとよいポイントを解説します。

 

医療における「経過観察」の本来の意味

 

医療の世界では、「様子を見る」に近い概念として、経過観察(watchful waiting)という考え方があります。

これは症状が軽い場合や、すぐに治療を開始する必要がない場合に、一定期間状態を観察するという医療戦略です。ただし重要なのは、

経過観察は「何もしない」という意味ではない、という点です。

 

 

本来の経過観察では、

定期的な診察

症状や数値の変化の確認

悪化した場合の治療開始

といったように、観察方法と次の行動が決められています。

 

 

つまり専門的に言えば、経過観察とは「放置」ではなく「計画された観察」なのです。

 

私たちに身近な例:健康診断の「経過観察」の場合

これは、日本では健康診断の場面でよく経験します。

会社や自治体の健康診断で、一定の項目を様々な検査によって正常~要検査~緊急性のあるものに分類することが出来ます。私たちは、年に一回程度、又は気になる症状がある時まどに、いわゆる「健診」を受けますよね。これは、身体疾患の早期発見~治療に役立つものとしておなじみのものです。

検査結果の書類が届いた時、「要再検査」とと書かれていることがあります。

この結果を見たとき、少なからずドキッとしますよね。

そこでもしかしたら、重大な病気ではないかと心配しながら病院に行くと、医師からこう言われることがあります。

「精密検査の結果、今すぐ治療が必要な状態ではありません。半年後にもう一度検査してみましょう。」と言われた場合

これが典型的な経過観察です。こういわれたら、安心しますよね。「すぐに治療が要る大きな病気ではなかったんだ」と感じるからです。

 

しかし同時に、医師は次のことを決めています。

 

次の検査の時期

観察する数値

悪化した場合の対応

つまり、安心して待てるのは、次の行動が決まっているからなのです。

 

もしここで、「とりあえず様子を見ましょう」だけで終わり、

 

再検査の時期

注意すべき数値

受診の目安

が何も説明されなければ、多くの人は不安になるでしょう。

 

 

人は「曖昧さ」に強い不安を感じる

 心理学の「曖昧さ回避」

 

「様子を見ましょうだけで終わり、その後の指標が何もない。」この感覚は心理学でもよく知られている現象です。

それが 曖昧さ回避(Ambiguity Aversion) です。

 

簡単に言うと、人は「分からないこと」そのものよりも「分からない確率が不明な状態」を嫌うという人間の特徴です。

 

エルズバーグの実験

この現象を説明する有名な研究がエルズバーグのパラドックスです。

目の前に二つの箱があります。

箱A:赤いボール50個/黒いボール50個 つまり赤が出る確率は 50% と分かっています。

箱B:赤と黒のボールが100個入っています。しかし、赤が何個で黒が何個なのかは 分かりません。赤が出るか黒が出るかの確率はわからないので運任せです。

 

もし「赤が出たら賞金」というゲームなら、多くの人は 箱A を選びます。なぜなら、確率が分かっているから安心できるからです。

箱Bは、もしかしたら当たりやすいかもしれません。しかし確率が分からないため、多くの人は避けます。これが「曖昧さ回避」です。

 

なぜ「様子を見ましょう」は不安を生むのか

 

ここで先ほどの話に戻ります。保護者がよく言われる「様子を見ましょう」この言葉には

  1. 期間
  2. 判断基準
  3. 次の行動

が含まれていません。

つまり保護者は、いつまで待つのか、何を見ればいいのか、どうなったら動くのかが分からない状態になります。これは心理学でいう【曖昧な状況】です。そのため人は強い不安を感じます。

 

場面緘黙における「様子見」の注意点

確かに、場面緘黙症の場合、時間とともに少しずつ改善する子もいます。しかし同時に、

  • 回避行動の固定化
  • 学校生活での孤立
  • 自己評価の低下

といった問題が進行する可能性もはらんでいます。また、心理学では、不安症は回避行動によって維持されることが知られています。

つまり

 

話さない

不安が下がる

回避が強化される

という行動のループが起こります

 

そのため改善のための支援に必要なことは

  1. 小さな行動目標
  2. 段階的な挑戦
  3. 成功体験

を積み重ねることが重要になります。

 

 「様子を見る」を専門的に定義すると

専門的に整理すると、様子を見るとは次の三つを決めることです

 

① 期限

例:4週間、6週間など、どれくらい観察すればいいのか、という時間的な区切りの目安を示すこと

② 観察するポイント

  • 発話の変化
  • 学校での参加行動
  • 回避行動

 ③ 見直しのタイミング

例:

  • 状態が変わらなければ支援を追加
  • 悪化すれば介入開始

この三つがそろって初めて、「様子を見る」という支援戦略になります。

 

 医師に「様子を見ましょう」と言われた場合

場面かんもくは精神疾患のひとつです。かんもくの子の子を持つ保護者様にとっては、医療機関の中でも、精神科や心療内科を受診するという事自体、ハードルがあるのではないでしょうか。

もしかしたら「もうこれ以上待てない」気持ちから、受診された方もあるかもしれません。かんもく児本人は医師と話すことが難しいため、保護者が代弁してこれまでの様子を医師に伝えます。その後、発達検査等を行う場合があります。保護者から、子どもの様子を聞いて、検査結果を見て、総合的に判断した結果、医師がこの言葉を使う場合、本当に経過観察が適切なケースもあります。

 

 

その場合保護者様は、是非、次の質問をしてみてください。

  1. どれくらいの期間を様子を見るのでしょうか?
  2. どんな変化があれば再受診すればよいですか?
  3. 悪化のサインは何ですか?

この三つを確認することで、

  • 観察期間
  • 注意すべき症状
  • 次の行動

が明確になります。

 

 スクールカウンセラーに言われた場合

私の所に相談に来られる保護者からよく聞くのが、学校のスクールカウンセラーに相談したとき、「少し話せているなら緘黙ではないと思います」「様子を見ましょう」と言われるケースです。

しかし場面緘黙は、「全く話せない状態」ではなく「場面によって状況によって話せない状態」なのです。

 

スクールカウンセラーから、こういわれた場合もに、次の質問が役立ちます。

  1. どれくらい様子を見るのでしょうか?
  2. 改善していないと判断する基準は何ですか?
  3. 次の支援はありますか?

この質問によって、曖昧だった状況が具体的な支援計画になるはずです。

 

 

まとめ

 

ここまで場面かんもく症の子を持つ保護者様が相談先で”言われるランキング1位”の「様子を見ましょう」という言葉を心理学と医療の観点から整理してきました。まとめると、次の三つが重要です。

  • 経過観察は本来、計画された医療戦略
  • 人は曖昧な状況に強い不安を感じる
  • 期限・判断基準・次の行動を確認することが大切

そして、「いつまで様子を見るのですか?」という質問は、決して失礼ではありません。それは、お子さんの未来を守るための誠実な問いなのです。

 

 

 

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「家では話すのに、どうして学校では話さないの」と、我が子のことが理解できずに困っている保護者様はいませんか?場面緘黙症は不安障害の一つで、話したいのに話せない状態です。我が子を理解することが支援の第一歩です。

  • 小さいころから、家以外で話すことが難しい

  • 家では元気でよくしゃべる

  • 小学校の中学年、高学年になって学校で話せなくなった

  • 聞かれたことに頷くことも非常にゆっくり

  • 緊張して体が固まる(動けなくなる)ことがある

上記の症状があるお子様のことで相談をご希望の方は

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    この記事を書いた人

    中之園 はるな

    現在精神科クリニックにも在籍し、カウンセリング実績延べ2,000人。育てにくい子を持つママの子育てを応援をしています。特に近年、緊張が強くて家以外では上手くはなせない、場面緘黙(かんもく)症の子が増えています。これまで場面緘黙に悩む親子、延べ4000人以上支援してきました。正しい知識と、適切な支援があれば少しずつでも話せるようになります。

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