場面緘黙とは?主な症状や治療法を解説!
大切なお子様が、学校や特定の場所で話せないことを知ったら、とても不安になりますよね。もしかするとそれは、「場面緘黙」かもしれません。この記事では場面緘黙とは何か?や、場面緘黙の症状、治療法を解説します。お子様に負担をかけずに状況を改善していくためには、知っておきたい知識ばかりなので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
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目次
場面緘黙とは
場面緘黙(ばめんかんもく)とは、特定の場所において、声を使ったコミュニケーションが一ヵ月以上取れない場合を指します。例えば、家庭内では楽しく話をしていて、自分の意思を伝えることができるのに、学校などの限られた状況下で、周りの人と話したり授業中に発言することができないような場合です。それに対して全緘黙とは、本人が過ごすすべての生活場面において、他者と話をすることができないことです。
場面緘黙は、意図的に話すことを拒否するのではなく、話すこと自体や、話しているところを他人に見られることに恐れや不安を感じることが特徴です。また特定の場所で話せなくなる症状「緘黙」に付随する症状として、「緘動」というものがあります。これは、強い緊張や不安から、身体が硬直してしまい、思うように動かせなくなってしまう症状です。
場面緘黙の原因とは?
場面緘黙の原因は未だにはっきりしておらず、個人によって違うと考えられています。環境の変化等の不安の高まる場面で、発症するケースも多く見られます。ほかの不安症障害と同じように、場面緘黙が出現するかどうかは遺伝的要素が関係しているという考えもあります。
またひと昔前は、家庭環境や親子関係が原因となって引き起こされるものだと考えられていましたが、現在ではほとんどの子どもに関連しないことが分かっています。早期に症状を改善し、二次的な問題を予防するためには、周囲の人が場面緘黙のことを正しく理解することが必要です。
場面緘黙の主な症状と現れやすい場面は?
場面緘黙の症状の出現の仕方は、本人が過ごす環境によっても異なります。ここでは、子どもと大人に分けて、それぞれの症状をご紹介します。
子どもに起こりやすい症状
子どもの場合は、学校など、不安や緊張を避けられない場面において、場面緘黙が生じやすくなります。学校での場面緘黙の症状には、以下のようなものがあります。
・必要以上に緊張や不安を感じやすい
・授業を理解していても、挙手して発言できない
・指名されても声を出して解答することができない
・音読ができない
・体育の授業で、身体が上手く動かせない(場合によっては硬直状態)
・休み時間や放課後、クラスメイトの輪に入れない
・会話を使ったスムーズなコミュニケーションが取れない
・トイレに行きたいなどの、意思を伝えられない
・常に目立たないように行動している
大人に起こりやすい症状
大人の場合は日常生活に加え、職場で過ごすときに場面緘黙の症状が出現することが多いです。職場での場面緘黙の症状には、以下のようなものがあります。
・必要以上に緊張や不安を感じやすい
・上司や同僚からの質問に答えることができない
・不明点やお願いしたいことがあった場合でも、話しかけることができない
・休憩中、雑談の輪に入れない
・言葉が詰まり、取引先関係者とのコミュニケーションが上手くいかない
・会議の席で発言できない
上記のような症状で困っている方は、専門のクリニックを受診してみましょう。支援を受けることで楽になるケースもあるので、福祉のサポートやサービスを活用していくことも大切です。
場面緘黙の治療法とは?
ここでは、場面緘黙の代表的な治療法をご紹介します。治療者の方針や本人の状態によって、アプローチの方法はそれぞれ異なりますが、鉄則は「スモールステップ」という考え方です。これは急いで一気に治そうとするのではなく、焦らずに段階を踏んで医療を進めましょうという方針を指します。
認知行動療法
認知行動療法とは、認知機能に働きかけて気持ちを楽にする、精神療法の一つです。自分の行動のパターンや特徴を把握して、どのようにすればストレスが軽減されて症状が和らぐのかを考え、柔軟な新しい考えに変えていく治療方法です。
段階的暴露療法
不安の原因になる刺激(人に話をする、声を聞かれる)に段階を踏みながら慣れていき、成功体験を重ねることで、発声することが良いことであるという考えを強化する方法です。
薬物を使った治療
場面緘黙そのものを治療するものではありませんが、多くの場面緘黙患者の根底にある、不安症状を軽減させるために、SSRIなどの抗うつ剤による薬物療法を用いることがあります。
カウンセリング
カウンセリングを通して、心の緊張を解いたり、原因を探ってより良い環境作りに役立てたりすることで、症状が緩和する場合があります。また特定の場面を再現してロールプレイを行い、コミュニケーションスキルを伸ばしていく方法を行います。
身体機能からのアプローチ
言語聴覚士の支援を受ける場合には、言葉や聴覚に関する問題を始めとし、身体機能の面から支援を行います。機能面を評価して、一人ひとりに適したトレーニングを提案します。
場面緘黙に似た症状の病気や疾患
場面緘黙に似た症状の病気や疾患をご紹介します。場面緘黙だけではなく、うつ病や社会不安障害など別の疾患が併存しているケースもあります。本人の状態を正しく見極めてそれぞれに適した治療を行う必要があるので、専門のクリニックや精神科などを受診しましょう。
全緘黙
全緘黙とは、すべての場面において、言葉を発することがない状態のことです。最初は場面緘黙の状態だったけれど、間違った対応で本人を追い詰めてしまったり、支援が十分でなかったりした場合に緘黙の範囲が広がり、全緘黙のような状態になるケースも稀にあります。
失声症
失声症は、ある日突然声が出なくなる症状で、思春期や更年期の女性に多く見られます。これは、心理的なストレスを受けることによって、精神現象が身体症状として表れている状態です。のどや器官、声帯には異常が見られません。
吃音症
吃音症は、話し言葉が円滑に出てこない、言語障害の一種です。話し始めに詰まってしまったり、同じ音を繰り返したりするという特徴があります。発達障害者支援法の対象となるので、学校でも特別な配慮を受けることができ、言葉の教室に通うことができます。
けいれん性発声障害
けいれん性発声障害とは、声を出そうとする自分のイメージとは裏腹に、声帯が異常な動き方をして、声が途切れ途切れになってしまう発声障害のことです。声帯を閉じる動きが強すぎることや声帯の過緊張が原因です。
うつ病
うつ症状として、話す意欲を失っている場合には、場面緘黙と似た症状を示すことがあります。しかし話ができない原因や、必要となる治療法は根本的に異なるため、早めの対応が必要です。
社交不安障害(SAD)
社交不安障害とは、社会における他人との関わりのなかで、過度の緊張を感じてしまい、社会生活を円滑に送れなくなってしまう障害です。震えや動悸、吃音などのさまざまな症状が現れます。特に人前で話すことや注視される状況下で、強い不安を感じる場合が多いです。
場面緘黙は早期発見することが大切
場面緘黙であることに早く気付くことができないと、本人の意思に関係なく話す練習をさせて追い詰めてしまったり、知らず知らずのうちに傷つけるような言葉をかけてしまっていたりすることもあります。少しでも早く診断を受けて正しい知識を持ち、本人の苦痛を取り除くことが重要です。
日本では、場面緘黙についての研究が遅れており、どの病院でも適切な治療を受けられるとは言えないのが現状です。正しい診断を受けて、少しでも早く本人の苦痛を緩和させるためにも、場面緘黙の治療に特化しているクリニックや病院を受診しましょう。
まとめ
いかがでしたか。場面緘黙の症状や治療法について解説しました。場面緘黙の症状を改善するには、周りの人が正しい知識を持って、本人を焦らせることなく少しずつ前に進んでいくことが大切です。言葉が出ないのが性格によるものなのか、他の原因があるのかの判別は、なかなか難しいです。子供が場面緘黙かもしれないなど、不安になったときには、ひとりで抱え込まずにクリニックなどの専門機関や学校の先生に相談してみてくださいね。
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