場面かんもく児の脳が「危険モード」から少しずつ抜けていくために
──場面緘黙症の回復を支える行動と関わりの視点

場面緘黙症の子どもたちは、
話せない場面において、脳がいわゆる「危険モード」に入った状態にあります(自動的に)。
扁桃体が過敏に反応し、強い不安が引き起こされると、脳は「安全を確保すること」を最優先に働かせます。
その結果、
- 声が出ない
- 体が固まる
- 動けない、反応できない
といった状態が生じます。
これは意志や努力の問題ではなく、脳と体が自動的に起こしている防衛反応です。
では、この「危険モード」に入った脳は、どのようにして少しずつ抜けていくのでしょうか。
目次
回復のカギは「話せたか」ではなく「どんな行動ができたか」
脳が危険モードにあるとき、周囲の大人たちが、「話しなさい」「頑張って声を出そう」といった働きかけは、かえって不安を強めてしまうことがあります。
なぜなら、かんもく児の脳にとっては「話せないこと」はまだ「安全だ」と脳が判断できていない状態だからです。
だからこそ支援では、
「話せたかどうか」ではなく、「どんな行動ができたか」に注目する視点が重要になります。
たとえば、
- その場に居続けることができた
- 視線を向けることができた
- うなずきやジェスチャーで反応できた
- カードや指差しで意思表示ができた
これらの行動が出来れば、かんもく児の脳がほんの少し安全を感じ始めているサインです。
かんもく児の脳は、
「ここは完全に危険な場所ではないかもしれない」という感覚を、こうした行動を通して少しずつ学習していきます。
無言を責めない。しかし、無言を「ゴール」にしない
場面緘黙症の支援において、「無言を責めないことが大切」という考え方は、近年かなり浸透してきました。
これはとても重要な視点です。
無言は、不安から自分を守るために起きている反応であり、それを叱ったり否定したりすることが回復につながらないのは事実です。
しかし、ここで 大きな誤解が生じやすい のも、また事実です。
それは、
「無言を責めない」ことが、「無言のままでいいと認めること」だと受け取られてしまうことです。
無言は「許容するもの」ではなく「通過点」
場面緘黙症の支援において、無言は当然ゴールではありません。
無言は、不安が強い時期に一時的に現れる反応であり、本来の子どもの望む姿ではない。
にもかかわらず、
- 「話さなくていいよ」
- 「無言でも大丈夫だよ」
というメッセージだけが強く伝わってしまうと、かんもく児の脳は次のように学習してしまいます。
「ここでは、反応しなくても安全が保たれる」
「無言のままでいれば、この場をやり過ごせる」
その結果、
無言という反応が固定化され、次の行動へ進むきっかけが失われてしまうことがあります。
これは一見「安心を与えている」ようで、実際には 回復の流れを止めてしまう関わり です。学校現場では残念ながら、このような誤解が生じているケースが見受けられます。それは「話さなくてもよい支援=場面かんもくを維持させる支援」になっているのです
無言を責めない ≠ 無言を承認する
ここで大切なのは、無言を責めないことと、無言を承認し続けることは全く別だという点です。
- 無言を責めない
→ 不安に対する反応として理解する - 無言を承認・許容し続ける
→ その反応のままで留まることを認める
この2つを混同してしまうと、支援は簡単に「場面かんもくを維持する支援」になってしまいます。
場面緘黙症の回復を支える関わりとは、「無言でいてもいい」ではなく、無言の今から、次の一歩へ進めるように支える」ことです。
絶妙なバランスが必要な理由
無言を責めず、しかし無言のままにもしない。この一見すると矛盾した姿勢こそが、場面緘黙症支援において最も重要なバランスです。
具体的には、
- 無言でも叱らない
- しかし「反応しなくていい」とも言わない
- 発話を強制しない
- けれど「何もしなくていい」状況は作らない
たとえば、
- 返事は声でなくてもいい
- うなずき、指差し、カードなど
次の反応が必ず用意されている
こうした関わりが、かんもく児の脳に次のメッセージを送ります。
「話さなくてもいいけれど、何らかの形でコミュニケーションが取れる」
「参加することが出来る」
このメッセージこそが、かんもく児の脳を“危険モード”から少しずつ引き戻す鍵になります。
非言語の関わりが、脳を安全にする
脳が危険モードから抜けていくプロセスでは、非言語の関わりがとても重要な役割を果たします。
- 視線
- 表情
- うなずき
- 身体の向き
- ジェスチャー
非言語のやりとりは、言葉よりも脳への負担が少なく、「つながっている」「拒否されていない」という感覚を
安全に届けることができます。
特に初期段階では、
- 話さなくても関われる
- 発話を求められない
- それでも関係が続く
という体験が、脳にとって大きな安心材料になります。
小さな行動を丁寧に拾う意味
回復の過程では、行動はとても小さく、ゆっくりと変化していきます。
- 昨日と同じように見えて、少し表情が違う
- 返事はないが、以前より長くその場にいられる
- 視線を向ける回数が増えた
こうした変化は見逃されやすいものですが、脳の中では確実に大きな変化が起きています。
是非見逃さないで欲しいものです
小さな行動を丁寧に拾い、「できたこと」として認識することは、
- 子どもに安心を与える
- 親自身の見方を柔らかくする
- 支援の方向性を見失わない
という点で、とても重要です。
親として、何を意識すればよいのか
親として大切なのは、「焦らないこと」ではなく、「基準を変えること」です。
- 話せたかどうか → 行動の幅
- 結果 → プロセス
- 他の子との比較 → わが子の変化
この基準の転換が、親の不安を和らげ、結果的にかんもく児の脳の安心につながります。
支援者に頼るとき、何を頼ればよいのか
専門家に相談するときは、
- 今、どんな行動が回復のサインなのか
- 無言をどう扱えばよいのか
- 次に目指す行動は何か
といった 行動の視点での整理 を一緒に行ってもらうことが重要です。
脳の危険モードを理解し、非言語の行動も含めて評価できる支援者は、回復のプロセスを丁寧に伴走してくれます。
まとめ:回復とは「安心の中で選択肢が増えること」
場面緘黙症の回復は、
- 不安が完全に消えることでも
- すぐに話せるようになることでもありません。
不安があっても、行動の選択肢が少しずつ増えていくこと。
それが、脳が危険モードから抜け始めているサインです。
無言を守りながら、しかし無言に留めず、次の行動へと静かに橋をかけていく。
その積み重ねこそが、場面緘黙症の回復を支える、最も確かな道なのです。
この視点を組み込んだ支援が「未来開花SMPT」です
ここまでお読みいただき、「なるほど、理屈は分かった。では、実際にどう関わればいいのか?」
と感じられた方も多いのではないでしょうか。
これまでお伝えしてきたように、場面緘黙症の回復には、
- 不安や扁桃体の過敏性を理解し
- 脳が危険モードから少しずつ抜けていく過程を支え
- 無言を責めず、しかし無言に留めない
- 非言語の行動を含め、行動の選択肢を広げていく
という非常に繊細で、かつ一貫した視点が必要です。
この視点を、理論だけでなく「具体的な関わり方」として体系化した支援が、
ミライ開花SMPT(Selective Mutism Parent Training)です。
ミライ開花SMPTで大切にしていること
ミライ開花SMPTでは、
- 「話せるようにさせる」ことを目標にするのではなく
- 不安があっても行動の選択肢が増えていくプロセスを親が理解し、支えられるようになること
を最も大切にしています。
そのために、
- 無言をどう捉え、どう扱うのか
- 非言語の行動をどう評価し、どう次につなげるのか
- 今、回復のどの段階にいるのか
- 次に目指す「小さな一歩」は何か
といった点を、一つひとつ丁寧に整理しながら進めていきます。
「これで合っているのか分からないまま関わる」状態から、「今やっている支援の意味が分かる」状態へ。
それが、未来開花SMPTが目指している支援です。
未来開花SMPTで学ぶこと
──12ヶ月(4ヶ月+8ヶ月)の2段階で、場面かんもく症児と親を支援するしくみ
今回お伝えしたように、場面緘黙症の回復には、
- 不安と脳(扁桃体)の反応を理解すること
- 脳が危険モードから少しずつ抜けていくプロセスを支えること
- 無言を責めない、しかし無言に留めないこと
- 非言語の小さな行動を拾い、次の一歩につなげていくこと
という、一貫した視点と具体的な手順が必要です。
この視点を、知識として学ぶだけではなく、親子の現実の場面で「実際にできる関わり方」へと落とし込んでいく支援が、
未来開花SMPTプレミアムコースです。
未来開花SMPTプレミアムコースは「4ヶ月+8ヶ月」の2段階
未来開花SMPTプレミアムコースは、12ヶ月の中で次の2段階に分かれます。
【第1段階:基本コース(4ヶ月)】
親御さんが、子どもへの関わり方を学ぶ期間です。
ここでは、
「話せるようにさせる」ことを急ぐのではなく、
まず 脳を安全にし、回避のサイクルを断ち切る土台 を整えます。
- 現在の親子関係の見直し(依存関係→自立サポートへ)
- 非言語でできる行動をどう拾い、どう次につなげるか
- スモールステップのやり方
- 学校や支援者と連携するときの考え方と伝え方
こうした内容を、親御さんが具体的に実践できる形で身につけていきます。
【第2段階:専門家による直接コミュニケーション・レッスン(8ヶ月)】
土台ができたあとに、専門家が子どもに直接関わり、
コミュニケーションのトレーニングを段階的に行う期間です。
「話すことが苦手な子どもに、どうコミュニケーションを取ればいいのか」
そのコツを、私(中之園)が直接、丁寧にお伝えしながら進めます。
- 非言語(視線・うなずき・ジェスチャー)から始める
- “安全なやりとり”を積み重ねる
- 少しずつ言語へ(段階を踏む)
- 「できた」を増やし、行動の幅を広げる
この積み重ねにより、
子どもは「反応が一択」だった状態から、「選べる反応が増える状態」へと変化していきます。
オンラインだからこそ育つ「安心」と「成長」
未来開花SMPTは、すべてオンラインで行います。
オンラインには「直接会わない不安」を感じる方もいますが、実は場面緘黙症の支援では、オンラインが大きな強みになることがあります。
- 移動の負担が少なく始められる
- 家で受講するため“安心の土台”を作りやすい
- 仲間と一緒に取り組むことで「居場所」が育つ
- 同じ仲間の頑張りを観ることで、挑戦のハードルが下がる
こうして、安心の中でコミュニケーション練習を積み重ねることで、いつの間にか非言語から言語へ、自然に段階が進み、
やがて子どもたちは、自分が暮らす地域や学校などの日常の場面でも、少しずつ話せるようになっていきます。
この12ヶ月で得られること
未来開花SMPTプレミアムコースで目指すのは、「話せる/話せない」だけの変化ではありません。
- 親子の関係性が共依存⇒自立サポート型へ整い、安心の土台が育つ
- 回避のサイクルが断ち切られ、話すことにメリットが生まれる
- 脳が危険モードから抜け、柔軟に反応できるようになる
- 非言語から言語へ、段階を踏んだコミュニケーションが育つ
そして最終的に、
子どもが「多様な場所」で、自分のペースで話せるようになることを支えます。
新講座開講のご案内(2026年4月開始・少人数制)
未来開花SMPTは、少人数で丁寧に伴走するため、定員を限定しています。
- 新講座:2026年4月スタート
- 定員:4名
- 現在2名決定
- 残席2名
(※2026年1月5日現在)
※年齢や状況に応じたコース選択について(補足)
※なお、未来開花SMPTでは、お子さんの年齢や状況、ご家庭のペースに応じて、
期間を短縮したコースを選択することも可能です。
- 親御さんが関わり方を学ぶ 4ヶ月バージョン(親支援中心)
- 専門家による子どもへの関わりを中心とした 8ヶ月バージョン(子ども支援短縮)
など、必要な支援に絞って取り組む形もご相談いただけます。
お問い合わせはこちら👇
https://www.reservestock.jp/pc_reserves_v3/courses/35217?course_id=130074
初回30分【個別相談】申し込み

「家では話すのに、どうして学校では話さないの」と、我が子のことが理解できずに困っている保護者様はいませんか?場面緘黙症は不安障害の一つで、話したいのに話せない状態です。我が子を理解することが支援の第一歩です。
-
小さいころから、家以外で話すことが難しい
-
家では元気でよくしゃべる
-
小学校の中学年、高学年になって学校で話せなくなった
-
聞かれたことに頷くことも非常にゆっくり
-
緊張して体が固まる(動けなくなる)ことがある
上記の症状があるお子様のことで相談をご希望の方は
・お名前
・ご住所/電話番号/メールアドレス
・対象のお子様年齢(学年)
・かんもく状態の経緯を簡単に
下記のフォームにご記入いただき送信してください。
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近年、多様化する価値観のなかで、心の問題も多様化、複雑化しています。うつ、社交不安などに加えて発達障害、ゲーム依存、コミュニケーションについての相談が増えています。精神科クリニックにも在籍し子どもから大人まで、カウンセリング延べ2,000人。クライアントの悩みに寄り添い、適切な心理療法を用いて問題解決へ向けてサポートします。