場面緘黙症における保護者の関わり方|過剰な配慮が成長機会を奪うメカニズム
場面緘黙症の子どもを支える保護者の関わり方について、過剰な配慮が成長機会を奪ってしまう仕組みを、臨床経験と研究知見をもとに解説します。

場面緘黙症の子どもを育てる保護者の多くは、「どう関わればいいのか分からない」という不安を抱えています。

(写真は、場面かんもく改善講座 ミライ開花コース受講の様子 記事とは関係ありません)
話せないことで困らないように、傷つかないようにと、先回りして子どものために配慮したり、支える関わりは、深い思いやりから生まれるものです。
しかし、場面緘黙症における保護者の関わり方によっては、
その配慮が、子どもの成長機会を奪ってしまうことがある――
臨床の現場で、私は何度もこの場面に立ち会ってきました。
目次
場面緘黙症の保護者に多い関わり方|無意識に「やりすぎ」になってしまう理由

場面緘黙症の保護者に多い関わり方として、まず挙げられるのが
「先回りして守る」「困らないように整える」という無意識の対応です。
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子どもが言えないことを、代わりに先生へ伝える
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不安になりそうな場面を事前に避ける
-
失敗や混乱を起こさないように、大人が調整する
これらはすべて、
子どもを想う気持ちから生まれた、善意の関わり方です。
だからこそ、
それが「やりすぎ」になっていることに、保護者自身が気づきにくいのです。
場面緘黙症の保護者に、初期支援として必要な配慮
誤解してほしくないのは、
これらの関わりが最初から間違っているわけではないという点です。
場面緘黙症の初期段階では、
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安心できる環境を整える
-
話さなくても参加できる配慮をする
-
子どもが過度な不安にさらされないよう守る
こうした支援は、回復の土台になります。
場面緘黙症における保護者の関わり方として、初期の「守る支援」は、むしろ必要不可欠です。
問題になるのは、
子どもが少しずつ力をつけてきたあとも、同じ関わりが続いてしまうことです。
場面緘黙症の保護者に多い関わり方が、成長機会を奪ってしまう仕組み

子どもの成長は、とても静かに起こります。
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表情やジェスチャーで意思表示ができる
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首を振る、うなずくなどの非言語表現が増える
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家では自分の気持ちを言葉にできる
-
不安はあっても、行動に一歩踏み出せる
これらはすべて、
「自分で向き合う力が育ち始めているサイン」です。
にもかかわらず、
場面緘黙症の保護者に多い関わり方として、いつまでも「転ばぬ先の杖」を差し出し続けてしまうと、
-
子どもが考える前に答えが与えられる
-
困る経験そのものが減っていく
-
自分で工夫する機会が失われる
という状態が起こります。
心理学の研究でも、
親が不安を下げるために過度に介入し続けること(親の巻き取り・過剰な配慮)は、
子どもの自律的な対処力を育ちにくくすることが示されています。
場面緘黙症における保護者の関わり方と「直面化」という考え方

ここで重要になるのが、
直面化(confrontation)という考え方です。
直面化という言葉は、「厳しい」「突き放す」「冷たい」と誤解されがちですが、心理臨床における直面化は本質的に違います。
研究では直面化は、
本人の中にある回避や不一致に、適切な距離感で気づきを促す関わりとして定義されています(Moeseneder ら)。
つまり直面化とは、親の思いやりの気持ちや助けたい感情を否定することではなく、
「これは誰の課題なのか」を整理し、課題を本人に返す関わりです。
近年の親支援研究(Lebowitz らによる SPACE プログラムなど)でも、親が子どもの不安を減らすための「肩代わり」を少しずつ減らすことで、子どもの主体性や不安耐性が育つことが示されています。
これは、「見捨てる」ことではありません。信じて任せるという、もう一段階深い支援です。
場面緘黙症の保護者の関わり方を「見直す」ときに大切な視点

こんな関わり、していませんか。
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「こうすればいいんじゃない?」と、子どもが考える前に助言してしまう
-
気づけば、子どもができないことをママがすべて抱えている
もし心当たりがあっても、それは責められることではありません。
むしろ、
気づけたこと自体が、関わりを変える第一歩です。
これからできる声かけは、例えば――
-
「どうしたいと思ってる?」
-
「ママは見守るよ。必要なときは呼んでね」
-
「今回は、あなたに任せてみようかな」
場面緘黙症における保護者の関わり方は、
守る愛から、信じる愛へと移行していくことで、子どもの成長を大きく後押しします。
思いやりを「成長につながる支援」へ

これまで述べてきた、親が与える行為は「思いやりの行為」ともい言い換えられます。
それは、本来、子どもを弱くするものではありません。ただ、その使い方を少し間違えると、成長の芽を摘んでしまうことがあることに、注目してほしいのです。
場面緘黙症の保護者の関わり方において大切なのは、「守るか・手放すか」の二択ではなく、
今、どの関わりがこの子の力を育てるかを見極めることです。
ママが少し手を離したその瞬間、
子どもは、自分の力に気づき始めるかもしれません。
それは、不安を伴う一歩であり、同時に、未来へ向かう確かな一歩でもあります。
あなたはどのタイプ?
場面緘黙症の保護者に多い関わり方・タイプ別チェック

ここまで読み進めてくださった方は、
すでに「自分の関わり方を見直してみよう」という姿勢をお持ちだと思います。
少し立ち止まって、
今の自分に近いものはどれかな?
という視点で、以下を読んでみてください。
※ 正解・不正解はありません。
※ いくつ当てはまっても大丈夫です。
① 先回りサポートタイプ
「困らせたくない」が一番に来る
-
子どもが困りそうな場面を事前に避けている
-
先生や周囲には、できるだけ細かく伝えている
-
子どもが不安になる前に、環境を整えたいと思っている
👉
思いやりがとても強く、初期支援では大きな力になります。
一方で、子どもが考する余地が少なくなっていないかが、次の見直しポイントです。
② 代弁・翻訳タイプ
「言えないなら、私が伝えればいい」
-
子どもの気持ちを察して、代わりに説明している
-
本人がその場にいなくても、話を進めていることがある
-
「今はまだ無理」と感じている
👉
子どもの気持ちを深く理解しているタイプです。
これからは、どこまでを本人に返せるかが鍵になります。
③ 見守りたいけど不安タイプ
「任せたい気持ち」と「怖さ」の間で揺れている
-
そろそろ手を離したほうがいい気がしている
-
でも、失敗したらどうしようと不安になる
-
どのタイミングで任せればいいのか分からない
👉
実は、変化の一番手前にいるタイプです。
「少し任せる」がどこからできるかを整理すると、関わりは大きく変わります。
④ 正解探しタイプ
「これで合っているのか」がいつも気になる
-
情報をたくさん調べている
-
他の家庭や成功例と比べてしまう
-
間違った関わりをしていないか不安になる
👉
真剣だからこそ迷ってしまうタイプです。
一般論よりも、「この子の場合どうか」を一緒に整理することが助けになります。
⑤ そろそろ向き合い直したいタイプ
「今の関わり方を、一度整理したい」
-
ここまで読んで、何か引っかかるものがあった
-
うまく言えないけれど、転換点を感じている
-
子どもの成長に合わせて、関わり方を変えたい
👉
これは、保護者としての感覚がとてもよく働いているサインです。
向き合う準備が整ってきている状態とも言えます。
タイプは「ラベル」ではなく、今の状態を知るヒント
ここで挙げたタイプは、固定された性格や資質ではありません。
-
時期によって変わることもあります
-
複数当てはまる方も多いです
大切なのは、
「今の関わり方が、今の子どもに合っているか」を一度、立ち止まって見直すことです。
この気づきを、次の一歩につなげるために

もし、
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「うちの場合は、どのタイプが強いんだろう?」
-
「この子には、今どこから手を離すのがいい?」
-
「見守りと支援のバランスが分からない」
そんな疑問が浮かんだら、そのままにせず、言葉にして整理する時間を持ってみてください。
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参考文献・研究背景
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Lebowitz, E. R., et al.(2020)
Parent-Based Treatment as Efficacious as Cognitive Behavioral Therapy for Childhood Anxiety.
Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry. -
Moeseneder, L., et al.(2019)
Impact of confrontations by therapists on therapeutic alliance.
Psychotherapy Research. -
Deci, E. L., & Ryan, R. M.(2000)
The “What” and “Why” of Goal Pursuits: Human Needs and the Self-Determination of Behavior.
Psychological Inquiry. -
日本心理臨床学会・日本行動療法学会 編
親支援・家族支援に関する臨床的知見