場面かんもくを「克服」したR君にインタビュー。話せるようになった先にあるもの
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話せるその先で、場面かんもくの子が手に入れたもの
目次
高校2年生まで、家の外でほとんど話せなかった少年が、今「社会に貢献したい」と自らの思いを語っています。
この動画に映っているR君は、かつて「場面かんもく」と呼ばれる状態の中で長い間、声を出すことができなかった男の子です。
- 学校では発言できない
- 地域の中でも自分の気持ちを言葉にできない
- 緊張が強くて、公共交通機関に乗れない
- 将来のことを考える余裕もなかった
そんな彼が今、私とのインタビューに答えて、過去・現在・未来像について、自分の言葉で語っています。
これは、「たまたま話せるようになった」結果ではありません。
この記事では、
“話せるようになったその先で、何が育ったのか”を、専門家の視点から解説していきます。
✔ 自分の過去を振り返り
✔ 今の自分を言葉にし
✔ 未来について考え、
✔ 「社会に貢献したい」と語れるようになったのか。
その背景には、
場面かんもく支援において最も見落とされやすい重要なポイントがあります。
それは、
「話すこと」だけでなく、子どもの内側にある“自己機能”が育ったことです。
ここから先では、
-
場面かんもく改善をどう捉えるべきか
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なぜ「話せる」だけでは不十分なのか
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どんな関わりが、子どもの未来を広げるのかを、R君の実例をもとに、順を追ってお伝えしていきます。
いつまでこの状態が続くのでしょうか
もし今、あなたが
「うちの子は、この先どうなるのだろう」
そう感じているなら――ぜひ、この先も読み進めてみてください。
「話せるようになりますでしょうか?」
場面かんもくのお子さんを持つ保護者の方から、私は日々この質問を受けます。
もちろん、その気持ちはとても自然です。学校で話せない。友だちと声を出して関われない。
その姿を見ていれば、「せめて少しでも話せるようになってほしい」と願うのは、親として当然のことだと思います。
けれど、長年場面かんもくの子どもたちと関わってきた専門家として、私はいつもこうお伝えしています。話せるようになることは、生きていくうえで必須のことではないかと思います。しかし、実は「本当のゴールは、“話せるようになること”の先にあると私は考えています。」
今回は、そのことを象徴する一人の青年――高校2年生まで家以外ではほとんど話せなかったR君(現在19歳)との対談を通して、
「かんもくを克服した先にあるもの」について、専門家の視点からお伝えしたいと思います。
高校2年生まで、家の外で話せなかったR君

R君が【ミライ開花SMPT】を受講してくれたのは、高校1年生の終わり頃でした。幼稚園時代からこの時まで、長い期間、家以外では声を出せず、必要最低限のやりとりも難しい状態でした。
周囲からは「おとなしい子」「真面目な子」と見られていましたが、本人の内側には、強い緊張と不安、そして「どうして自分はできないのだろう」という葛藤がありました。
決して怠けていたわけでも、甘えていたわけでもありません。ただ、場面かんもくの症状(緊張と不安)によって“声を出すという行動”が強く抑制されていたのです。
これは場面かんもくの子どもたちに共通する特徴です。
話したくないのではなく、話したい気持ちはあっても、体が反応してしまう。
この状態を、単なる「性格」や「そのうち治るもの」と捉えてしまうと、本来必要な支援のタイミングを逃してしまうことがあります。
「オープンクエスチョン」に答えられるようになるという変化
先日、R君と約1年ぶりに再会し、インタビューを行いました。
その中で私が意識したのは、「自由に意見を述べる」――いわゆる オープンクエスチョンに答えること です。
「当時、何が一番つらかった?」
「その時どんな気持ちだった」
「今、どんなことを大切にしている?」
「この経験は、あなたにとってどんな意味があると思う?」
「これから、どんな人生を歩んでいきたい?」
実はこれらの質問は、
場面かんもくの子どもにとって 非常に難易度が高い ものです。
なぜなら、
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自分の気持ちを言語化する経験が少ない
-
間違えたらどうしよう、という不安が強い
- 言いたくても、どういえば良いかわからず固まってしまう
といった背景があるからです。
しかしR君は、少し考えながらも、落ち着いて、自分の言葉で、過去・現在・未来について語ってくれました。
その姿を見て、私は強く感じました。
「話せるようになった」だけでなく、「自分を内側から理解し、言葉として外に出せるようになった」のだと。
かんもく改善とは「自己機能」が育つプロセス
場面かんもくの改善を、私は次のように捉えています。
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不安を感じ取る力
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自分の状態を把握する力
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選択する力
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行動を調整する力
これらはすべて、**自己機能(セルフファンクション)**と呼ばれる領域です。
「話す」という行動は、その一部にすぎません。
自己機能が育つことで、結果として「話す行動」も選択できるようになるのです。
R君の場合も同じでした。無理に話させるのではなく、安心できる関係性の中で、少しずつチャレンジする⇒自信をつける⇒再チャレンジ⇒家庭→地域→学校と領域を外へ外へ拡大していくプロセスの中で「話す」経験を積み重ねてきました。
「社会に貢献したい」と語った19歳の言葉
今回の対談で、【将来の夢】について訊いた時、私の心に深く残ったのは、R君のこの言葉です。
「克服した今だからこそ、この経験を活かして
社会の中で役に立てる人間になりたいと思うようになりました」
かつて「できないことが多い自分」であり支援される側だった経験があるからこそ、当事者の痛みや不安に気づける。
支えられた経験があるからこそ、今度は支える側になりたいと思える。
これこそが、かんもくを克服した先に育つ“社会性”だと思うのです
「話せる」だけで終わらせない支援を
私が考える場面かんもくの支援は、短期的な「成功体験」だけを目指すものではありません。
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自分を理解し
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自分で考え
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自分の人生を選び
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社会とつながっていく力
その土台を育てることが、何より重要です。R君は今、新しい夢に向かって、確実に歩き出しています。
R君のインタビューを聴いていただいた皆様のなかには
「今はまだ、克服できた未来が想像できない」
「わが子が、本当に変われるのだろうか」
そう感じている保護者の方にこそ、私は伝えたい。
かんもくの改善とは、
子どもが“自分の人生を生きる力”を取り戻していくプロセスなのです。
