思春期の場面かんもく児の行動の視点から考える「回復」と支援のあり方について解説します
思春期の脳と場面かんもくの行動固定化との関係

目次
思春期とは何か──脳の発達から見る定義
思春期とは、一般に小学校高学年頃から20歳前後にかけて続く、心・身体、そして脳が大きく再編成される発達段階を指します。
この時期の最大の特徴は、
脳の各機能が同時に、均等に発達するわけではないという点にあります。
思春期の脳では、
-
不安・恐怖・恥・警戒といった
情動反応を司る扁桃体や辺縁系が先に活性化する -
一方で、
いわゆる、「理性」と呼ばれる感情を調整し、状況を俯瞰し、「今は安全だ」「大丈夫だ」と再評価する前頭前野の成熟は、10代後半から20代前半まで続くという発達の時間差が生じます。
つまり思春期の子どもたちは、
感情は強く揺れ動きやすいが、
それを抑えたり整理したりする力は、まだ発達途中
という脳の状態にあります。
ここで重要なのは、
この脳の特性自体は、すべての子どもに共通して起こるという点です。場面かんもくのある子どもだけでなく、定型発達の子どもたちも同様に、
-
他者の視線に敏感になり
-
評価や失敗への恐怖を感じやすくなり
-
「どう見られるか」を強く意識する
という思春期特有の脳の変化を経験しています。
では、なぜ同じ思春期でも「行動の出方」に差が出るのか
同じ思春期の脳特性をもっていても、少しシャイな性格だったとしても、すべての子どもが場面かんもくになるわけではありません。
差を生むのは、不安への感受性と、これまでの学習経験です。
場面かんもくの子どもたちは、
-
もともと不安反応が出やすい
-
人前で話すことや注目されることに、強い脅威を感じやすい
-
過去に「話して嫌な思いをした」経験をもっている
といった条件が重なっていることが多くあります。
思春期の脳は、他者評価や失敗に対して非常に敏感です。
そのため、場面緘黙の子どもたちは
-
小さな声が出た瞬間に騒がれた
-
面白がられて、はやしたてられた
-
必要以上に注目されてしまった
といった出来事が、
大人が思う以上に強い脅威体験として脳に刻まれます。
その結果、「話すこと」そのものが危険信号として処理されやすくなります。
行動は「守るために身についた反応」
行動の視点から見ると、
場面かんもくの子どもたちの「話さない」「動かない」という行動は、問題行動ではありません。話さないだけでその他の行動は、話せる子どもと同じことが多いのです。
例えば
- 学校にきちんと登校する(不登校になる場合もあります)
- 他の児童生徒が困るような迷惑行動はない
- 行事にも参加できる
- 学習の理解に問題はない
つまり、話さないだけで学校生活には最低限適応していることが多いのです
「話せないこと」それは、不安から自分を守るために身につけてきた防衛反応です。
たとえば、
-
話さないことで、不安が下がった
-
動かないことで、注目を避けられた
こうした経験を通して、場面かんもくの子どもは無意識のうちに(自動的に)学習します。
学習理論的に見ると、これは負の強化による行動獲得です。
不安が高まる
→ 話さない
→ 不安が下がる→ 一時的な安心
という経験が繰り返されることで、「不安 = 話さない」という反応が習慣化・固定化していきます。
さらに、
-
話したことで嫌な思いをした経験
が加わると、「話す行動」は抑制され、「話さない行動」はより強く強化されます。
これは意志や性格の問題ではなく、思春期の脳特性と学習の結果として、きわめて合理的に形成された行動なのです。
思春期の場面かんもくは「頑な」に見えやすい
思春期以降になると、
-
自己意識の高まり
-
失敗記憶の蓄積
-
予期不安の増大
が加わり、行動はより慎重に、より限定的になります。
支援者や教育者の目には、
-
頑な
-
変わろうとしない
-
意欲がない
と映ることもあるでしょう。しかし行動の視点から見れば、それは、
これ以上傷つかないために、
非常によく機能している防衛反応
に他なりません。
では、思春期の場面かんもく児に対してどう支援すればよいのか
行動の視点で考えると、回復とは「話せるようになること」ではありません。
不安があっても、行動の選択肢が増えていくこと。これが回復の本質です。
思春期の場面かんもく支援では、次の視点が重要になります。
① 話すことをゴールにしない
話すことを急に求めると、
脳は「安全が脅かされた」と判断し、
防衛反応をさらに強めます。
まずは、
-
話さなくても参加できる
-
発話以外の手段(ジェスチャー・筆談など)が尊重される
環境を整えることが先です。
② 回避以外の「安全な行動」を増やす
回復とは、回避(話さない状態)をなくすことではなく、回避以外の選択肢を増やすことです。
-
その場にいられる
-
見ているだけで参加できる
-
小さな行動を自分で選べる
こうした行動が成立することで、「話さないしかなかった状態」から徐々に抜け出していきます。
③ 失敗しても戻れる関係性をつくる
思春期の回復は一直線ではありません。
大切なのは、
-
うまくいかなくても責められない
-
不安が強い日は戻ってこられる
-
再チャレンジが許される
という関係性の安全基地です。
これは、
前頭前野の発達を支える環境づくりでもあります。
行動の視点から見た「回復」とは何か
行動の視点から見た回復とは、
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不安があっても行動を選べる
-
回避一択ではなくなる
-
自分で調整しながら関わろうとできる
状態が育っていることです。
思春期の場面かんもくの回復は、静かで、外からは分かりにくいことが多いものです。
しかし確実に、
-
行動の幅
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自己調整力
-
他者との関わり直し
が進んでいます。
「話せるかどうか」だけで回復を測らないこと。行動がどれだけ自由になってきているかを見ること。
それが、
思春期の場面かんもく児を支える、最も専門的で誠実な支援の視点だといえるでしょう。
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小さいころから、家以外で話すことが難しい
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家では元気でよくしゃべる
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小学校の中学年、高学年になって学校で話せなくなった
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聞かれたことに頷くことも非常にゆっくり
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緊張して体が固まる(動けなくなる)ことがある
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